菅原敏 | 季節を脱いで ふたりは潜る

2,200円(税込)

DETAIL

著者:菅原敏
生年月日:不明〈予想:天秤座〉



幾重にも着込んできた 季節をすべて脱ぎ捨てて、
今では遠く無くしたものに、水の中で手を伸ばす――。

『かのひと 超訳 世界恋愛詩集』以来
3年ぶりとなる菅原敏の新詩集は、移ろいゆく暮らしを
やさしく抱き寄せ、綴った季節の詩。
〔読者特典:電話朗読付〕

燃やすとレモンの香る詩集や
毎夜一編の詩を街に注ぐラジオ番組など
数々の試みをおこなってきた菅原敏が
今作では、遠い日々の断片を拾い集めて
ぺージに挟みこむように
季節の情緒を12ヶ月の詩に写しました。

カバーを“脱ぐ"とあらわれる肌のような表紙や
帯につくられた“小さな海" など、こだわり抜いた造本。

さらに朗読などの公演が叶わない今、
一篇の詩を電話でお届けする
読者特典〔電話朗読室〕の電話番号を
本書の中に隠しました。

雑誌『BRUTUS』での連載を中心に
近年の代表作含む、12ヶ月×4編〔全48編〕を収録。

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> 4月

アスファルト上の片手袋を拾い上げると爆発する冬が終わって、動物たちが巣穴で目覚めるころ。やさしい光のなかでも私たちは少しだけ狂ってる必要があった。ほぼ毎日彼女は家にいるので、通帳なのか未来の姿なのか、私は何かを見ないようにと驚くほどに毎日眠る。オムレツリンゴヨーグルト、朝飯を食べ終わると午後三時。彼女の肌も荒れてきた。幸せな暮らしと正しい暮らし。睡眠薬とビタミン剤。それぞれの違いを交換したら洗濯機、私は彼女の下着を洗う。(暮らし)

> 7月

肌と肌の輪郭が
あいまいに消えされば
国境を越えて
なめらかな山の稜線
カーテンの隙間から
初夏の日差しが
背中を打ち抜いて
ちいさな午後の死
ラジオのニュース
遭難者2名
同じコップで水を飲み
眠りに落ちる前に聞いた
ひとつのからだで
いきるための理由
(冷たい水)



単行本:144ページ
出版社:雷鳥社
新 品

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